車を運転する方は、いつ事故を起こすか分かりませんし、運転をしていなくても交通事故に遭う事だってあります。
交通事故と言われると人身事故もしくは、車同士、物損事故などの事故をイメージすると思いますが、もし人身事故に遭った場合、程度にもよりますが仕事をしているのであれば、休まなければいけなくなるかもしれませんよね。
当然、仕事を休んだら無給になってしまい、生活に支障をきたします。
そこで、皆さんは何となく「休業補償」という言葉を聞いたことはありませんか?
ここでは、交通事故による休業補償について詳しくご説明したいと思います。
休業補償について
「会社を休んだら休業補償がもらえる」と簡単に思っていてはいけません。
まず、休業補償とは何なのかを知っておくべきです。
ずばり、休業補償とは「労災保険(労働者災害補償保険)」で、補償されるものになります。
この労災保険の定義は、以下になります。
労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気に見舞われたり、あるいは不幸にも死亡された場合に、被災労働者や遺族を保護するため必要な保険
給付を行うものです。また、労働者の社会復帰の促進など、労働者の福祉の増進を図るための事業も行っています。
次に労災保険で休業補償を受ける場合に、以下の条件を満たす必要があります。
- 勤務中もしくは通勤中に起きた事故によって休業
- 働くことが出来ない
- 休業の間、賃金を支給されていない
- 会社員(アルバイト・パート含む)
労災保険に加入している事業者に雇われている方はすべて対象ですが、社長や役員、自営業者、専業主婦などは、対象ではありませんので、ご注意下さい。
ちなみに労災保険の特別加入という制度があり、この制度に加入している方は休業補償の請求は可能です。
交通事故による休業補償を受け取るには、上記条件を満たしているのであれば、労災保険に申し込む事が可能と言う事を覚えておきましょう。
休業補償の計算式
休業補償について説明いたしましたが、休業補償には、以下の2つの給付名があります。
- 業務上の負傷による休業(業務災害):休業補償給付
- 通勤中の負傷による休業(通勤災害):休業給付
交通事故による休業補償となれば、「休業給付」となるでしょう。
また、もう一つ知っておくべきことは、休業開始して4日目から支給されるという事です。(待期期間3日)
4日目から支給だなんて聞くと、すぐにもらえるのか、と勘違いをしてしまう方もいらっしゃいますが、実際、振り込まれるのは申請書を提出してから、約1ヵ月後になりますのでご注意下さい。
まずは、いくらぐらい支給されるのかを知っておきましょう。
- 1日につき、給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)
給付基礎日額の計算
給付基礎日額は、原則として事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に支払われた「賃金の総額」を、その期間の総日数(暦日数)で除した金額です。
ただし、賃金が時間額や日額、出来高給で決められており労働日数が少ない場合など、総額を労働日数で除した6割に当たる額の方が高い場合は、その額を適用します( 最低保障額 )。
過去3ヶ月間の賃金の取り方:締切がある場合締切日ごとに、通勤手当、皆勤手当、時間外手当など諸手当を含み税金や社会保険料などの控除をする前の 賃金の総額により計算します。
<月給の場合の計算例>
・月給230,000円、通勤手当8,000円が支給(賃金締日は毎月末日)
・8月15日に交通事故に遭い休業
事故に遭った過去3ヶ月ですから、238,000円(5月)+238,000円(6月)+238,000円(7月)=714,000円
次に歴日数ですが、5月は31日、6月は30日、7月が31日ですので、歴日数は92日になります。
714,000円÷92日=7,760.86円(給付基礎日額)
交通事故後に休業補償を申し込む流れ
具体的に、交通事故に遭ってから、休業補償を申し仕込む流れをご紹介いたします。
- 労働災害発生(交通事故)
- 病院受診(診断を受ける)
- 会社に報告
- 完治もしくは通院途中で、休業給付支給請求書に医師および会社の証明をもらう
- 請求書を会社の管轄する労働基準監督署に提出
- 労働基準監督署の調査
- 支給・不支給決定
- 指定された口座に給付金振込
だいたい、このような流れになりますが、知っておくべきことは「労働基準監督署に請求書を提出してから約1ヵ月程度、支給決定まで時間がかかる」と言う事です。
また、労働基準監督署に提出とありますが、会社から提出しても良いですし、ご自身で郵送して提出しても大丈夫です。
休業給付支給請求書について
通勤中の負傷による休業の場合の請求書は「様式第16号の6」という書類を使用します。
表裏、別紙1表裏、別紙2、別紙3と複数枚あります。
一般的には、別紙ではない、請求書裏表のみを提出します。
書き方は、そんなに難しくありませんが、上記をご覧ください。
表面①には「会社の署名」、②には「病院医師の署名」が必要になります。
また、表面上部には、労働保険番号の記載が必要になりますので、いずれにしても会社に相談されると良いでしょう。
「様式第16号の6」を以下にダウンロードできるようにしてありますので、ご自由にお使いください。
休業補償について気になる事
交通事故ともなると、おそらく自賠責保険などから保険金を受け取る場合もあるでしょう。
休業補償は、給付基礎日額の60%で、さらに休業特別支給金20%を足した80%が、受取れる給付金になると説明してきました。
一方で自賠責保険による補償は、休業損害分の100%を受け取る事ができます。(自賠責保険では休業損害と言います)
さらに、休業特別支給金も別で受け取れるので、実質120%の給付金を受け取れるという事なんです。
業務中や通勤中の交通事故による休業で、労災保険と自賠責保険から二重で休業補償が行われることはないので、一般的には自賠責保険を使用する方がお得になります。
しかし、以下のような場合は労災保険で休業補償を請求した方がいいと思いますので参考にしてみて下さい。
自賠責保険に加入していない車で事故を起こされた場合は、政府保障事業という所に請求する事も可能ですが、請求自体が面倒な事や給付が行われるまでの日数がかかる事から、労災による休業補償の請求をしたほうが早く済みます。
交通事故であったとしても、被害者であるご自身の過失があった場合、自賠責保険は減額されることもあるそうです。
その場合、労災保険で休業補償を受けた方が良いでしょう。
まとめ
交通事故による休業補償についていかがでしたか。
いずれにしても、休業補償はすぐに給付されるわけではありません。
仮に全治1ヵ月だとすれば、1ヵ月後に完治し、会社の署名、医師の署名をもらい申請することになり、そこから約1ヵ月で支給決定と、休業している期間は無給と言う事になります。
今回ご紹介した内容を参考にしていただければ幸いです。